「一歩間違えれば、超カッコ悪いタイトル」

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――次の「Mammon Will Not Die」ですが、「PANTHEON -PART 1-」や「ICARUS」がありますから、“Mammon”が出てきても不思議はないのですが、どういう意味合いで用いたんですか?

苑:“Mammon”って、七つの大罪の強欲とか富の悪魔のことなんですよね。僕は昔から七つの大罪には興味があって、映画やアニメを観たり、いろんなところで見聞きしてきたんですが、この“Mammon”なる悪魔だけは、そんなに悪く無いじゃんって思ってたんです。強欲であること、富を欲すること。何かを成し遂げるときに、そういう力は絶対に必要だと思うんですよ。だから、そういう欲求をいけないことだと包み隠してしまうよりも、これが人間だよと言ったほうが、強い人間になれると思うんですね。だから、戒めとしてではなくて、僕の中に生きる“Mammon”という意味合いで、“Mammon”は死なないというタイトルにしたんです。

――作曲した彩雨くんは、どんなイメージを描いていたんですか?

彩雨:サビは今まで通りのストレートでメロディアスなものにしたいなと思ったんですけど、今回のアルバム全体を通して、コンセプトと言うほどのことではないですけど、シンプルな構成というものが念頭にある中で、どうやってひねりを出していくかというのが、僕の中のテーマだったんですよ。
 この曲は普通に聴いていると、何も気にせず聴けるんですけど、プロツールズ上の拍子の変更がいっぱいあるような、クリックの頭の部分が妙なところにいっぱい入ってくるようなリフにしたいなと思ってて。変拍子というわけじゃないんですけど、よくよく分析すると、何分の何(拍子)っていうのがコロコロ変わるんですね。

――確かにスムーズに聴けますもんね。ギター・ソロ後のシンセのフレーズはエスニックな雰囲気がありますが、これは歌詞に触発されたものですか?

彩雨:いや、元からあったイメージでしたね。最初、あのコード進行を何箇所か入れようと思ったんですけど、一箇所でいいんじゃないかって意見があって、ソロ裏に入れたんですね。ああいうものは、いい感じのフックになるかなとは思います。ただ、「AM6:00に針路をとれ」もこの段階ではあって、あっちが不思議な音階をいっぱい使ってるんで、この曲はソロ中だけでやっておこうかなというのもありましたね。

悠:彩雨が言うように、ただ聴いている分には普通なんですけど、イントロの節々にわかりやすい何かを入れようと思ってやってみると、「あれっ!?」ってなるんですよね。4分の4、4分の3、4分の2、4分の3、4分の4、4分の2、4分の6みたいな感じなんですよ。最後の4分の6のところのフィルをどうしようかなと思ったところで……あのキメはJaYくんが提案したんだっけ?

彩雨:そうそう。

悠:その前もキメっぽくはなってたんですけど、よりわかりやすくなったというか、それで僕もドラムを結構つけやすくなったところはありましたね。

燿:改めて考えると、この10曲中、僕は一番何も考えずに弾いたような気がします(笑)。その意味では、ベースのアレンジ的には、一番今までっぽいかもしれないです。


bass 燿

――「Excalibur」はギタリストが作りそうだなと思いましたが、彩雨くんの作曲なんですよね。

彩雨:そうですね。僕の中でのこの曲のポイントは、サビの中での転調なんですよ。1行ごとに転調するんだけど、明らかにここはキーが変わりましたよねみたいな転調じゃなくて、スルッと転調を聴かせる。コード感とメロディの位置でそういうふうになると思うんですけど、すごくそこは意識してましたね。

苑:ハモりだけ聴いてたら、転調しましたってちゃんとわかるんだよね(笑)。

彩雨:そうそう。だから、ハモりだけ聴くと気持ち悪いんですよ(笑)。「SYMPOSION」もそうなんですけど、結構、そういうふうにメロディに仕掛けをしてあるんですよね。

――間奏もベース・ソロ、ドラム・ソロ、キーボード・ソロという流れになっていて。

彩雨:そう。『PHOENIX RISING』に入っている「MASK」のように、それぞれの見せ場が順番に変わっていくのをやりたかったんですよ。ただ、今回は他の曲でもリードはいっぱい弾いてるんで、ここはメロディ、メロディしてなくてもいいかなとは思っていて。流れとしては、それぞれにスポット・ライトが当たりつつ、最後にギターとヴォーカルが掛け合いながら、いい感じに最後のサビに行く。そんな構成を意識しましたね。

――その構成がまたポイントですよね。キーボード・ソロ明けはギター・ソロが来るだろうと思いきや、歌のパートに入っていって、その後ろでアクティヴに弾いていくという。

彩雨:そうですね。JaYくんにも、ここはバッキングじゃなくてソロだからって言って。だから、エンジニアさんにも、そこは音量を上げてもらったんですよ。言うなれば、Cメロ兼ギター・ソロですね。ステージではJaYくんがヴォーカルと近いところにいるんで、ライヴでは二人でバトルするぐらいの気持ちで、JaYくんにいっぱい目立って欲しいなと思いますね。

――“Excalibur”とは、アーサー王が持つ剣として知られていますが、エピックな感じのものが好きな人は惹かれる言葉ですよね。歌詞には<黄金の剣>なんて言葉まで出てきますよね。

苑:そう。黄金というのは強く輝いているイメージからですね。自分の胸に持っている剣というのは、とてつもなく輝いていなきゃいけないんですよ。圧倒的な正義感を持った主人公の光を表しているので、タイトルも<黄金の剣>にしたかったぐらいなんですけど、それに代わるものとして、世間一般、特にヘヴィ・メタル界で最も認識されているものといえば、やっぱり“Excalibur”だなと。一歩間違えれば、超カッコ悪いタイトルですけど、ただ、今のこの曲でこの言葉を出すことによって、カッコいいものになる……という気がしてます。

――これもまさに、前進する力強い気概に満ちた今のバンドの姿勢そのものですよね。“英雄”という言葉が歌詞の中にあるのも象徴的ですし。

苑:そうですね。ここはちょっと遊び心で。やっぱり、「PANTHEON」と同じ題材を歌っているから、ピタッとハマりますよね。

――「AM6:00に針路をとれ」はイントロからして軽快さがありますが、摩天楼オペラらしい曲だなと思いましたよ。

彩雨:そうですね。ライトに聴ける感じにしたくて、スタジオであれこれ考えながら、サビもシンプルかつ、キャッチーなものになったなと思います。ギター中心の曲じゃないように仕上がっているとは思うんですけど、僕の中ではギターが中心なんです。というのは、ギターがずっとF#の音(一音半下げチューニングでポジションA)で、ひたすらオルタネイトしてるのが、この曲の重要なところだったからなんですね。そのギターの周りにみんながいろいろ味付けすることによって、変化をつけていく。

悠:この曲こそ、僕は彩雨の考えた通りのドラムにしましたね。間奏のところはいじりましたけど。

彩雨:あそこはスタジオでノリ一発でやろうよって言っててね。その辺はファースト・インパクトで作った感じだったよね。

悠:そう。でも、この間、ツアーに向けてスタジオで叩いてみたら、結構、複雑に作っちゃったなと思いましたね(笑)。あのときはこういうモードだったんだなと思い出しながら。それと、この曲は終わり方が潔いですよね。今回はそういう終わり方の曲が多いんですけど。

燿:ベースは考えるのに圧倒的に時間がかりましたね。一番寝かしましたから(笑)。アレンジの指定が、食っているところだけ合わせていくことだけだったんですよ。そこで、一つリフを作るから始まったんですけど、出来上がってみても、自分の中でシンプルすぎたんですよ。そこで数日経ってから改めて聴いたときに、間奏のところをもっと抜こうと思ったんですね。このアルバムでの、俺のハイライトかもしれないですね(笑)。

彩雨:ははは(笑)。でも、これは10年前のうちらだったら、きっとできなかった曲だなと思いますね。

――タイトルは有名な映画を思わせますよね。

苑:『北北西に進路を取れ』ですよね。

――ええ。ただ、歌詞の内容としては、とても日常的な話が綴られていて。

苑:この曲を聴いたとき、浮遊感、何か漂ってるなぁって感じがしたんですよね。そこから、<漂い人 人生に迷ってる>というところで主人公が決まったんですよ。毎日同じ時間に起きて、同じ仕事をして帰る、それだけの自分に「本当にそれが一番やりたいことだったかな?」と疑問を持って、自分探しの旅を始めるんですよね。とはいえ、この旅は完全に脳内ですけどね。実際に東も西も、北も南も、航海していくわけではなくて、それぐらい自分の中で向かうべき道を模索しているんですよ。

――ただ、会社勤めの日常を表現する場合、一般的には“9 to 5”、つまり、午前9時から午後5時が用いられると思うんですよ。ところが、ここでは朝6時を持ち出してきた視点が興味深いなと思いましたね。

苑:何で出てきたのか、わからないんですよね。

――なるほど。具体的な描写としても、<こんな俺も世帯持ってさ><孫の顔 想像したりして>などの一節が出てきますが、ロックにおいて、こういった歌詞は見たことがないですよ。

苑:それは嬉しいですね。ちょっと説明不足になっちゃってますけど、実はここの2行で、18〜20歳ぐらいから、おじいちゃんまでを順を追って書いてるんですよね。そこまでやって、人生の未来予想図を作っていたんだけど、<人生そんなうまいもんじゃない>と、現実は違うということを書いてる。

彩雨:前に「蟻の行進」って曲がありましたけど、あれも上手く現代社会を比喩的に捉えてるなと思ったんですよね。これもそのシリーズで、目の付け所と表現の仕方が絶妙な感じですね。




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摩天楼オペラ
new album「PANTHEON -PART 1-」
2017.4.12 release
(初回限定盤)
「PHOENIX」Music Video,「PANTHEON」Music Videoを収録したDVD付き
BZCS-91152 ¥3,241(+TAX) 
(通常盤)
BZCS-1152 ¥2,778(+TAX)

01.PANTHEON
02.Curse Of Blood
03.ICARUS
04.Mammon Will Not Die
05.Excalibur
06.AM6:00に針路をとれ
07.SYMPOSION
08.何度目かのプロローグ
09.SHINE ON
10.止まるんじゃねえ

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